高分子絶縁材料の破壊の基礎過程と劣化メカニズム

絶縁物はなぜ壊れるか?劣化が進んで破壊する過程は?絶縁劣化の非破壊診断方法とは?

高分子絶縁材料の破壊の基礎過程と劣化メカニズム

主催:R&D支援センター

日時:平成23年1月19日(水) 13:00〜16:30

<講座のポイント>
電気システムにおいて絶縁物を扱う機会は頻繁にあるが、絶縁物は支持物としても用いられ、機械的強度を確保すると、電気的には十分な余裕があることが多い。しかし電界の集中や絶縁物の劣化などにより、思わぬところで絶縁破壊が生じることもあるため、システムの信頼性の要となる絶縁系についての知識が必要とされる。
 絶縁破壊や絶縁劣化にはいくつかのモードがあるため、絶縁技術者は通常これらの基礎を学んでから現場での業務をはじめる。講座では、大学の高電圧工学の一環として行われている絶縁の基礎を中心とした解説を行う。

<プログラム>
第1部 絶縁物はなぜ壊れるか(絶縁破壊の基礎過程)
 固体絶縁物の絶縁破壊については、実は古くから研究が行われており、その歴史は100年を超える。第1部では、大学の専門課程で学ぶ絶縁破壊の基礎理論を、数式を使わずにできるだけ感覚的に理解する。絶縁破壊の研究が絶縁物進化に伴って現在でも重要とされる理由は、絶縁破壊が材料の本質的な破壊電界のみで決定されず、熱的機械的条件や電界の不平等などの副次的要因に大きく左右されることである。これについてもいくつかの例で簡単に解説する。

 1. 熱破壊
 2. 真性破壊
 3. 電子熱破壊
 4. 電子なだれ
 5. 電気機械破壊
 6. 空間電荷の影響

第2部 劣化が進んで破壊する過程(劣化メカニズムとその定量的取扱い)
 絶縁物は電気的のみならず、熱的、機械的、環境的にも過酷な条件で使用されることが多い。しかも一旦使用が開始されると、社会インフラを支える重要な場で長期に亘って絶縁機能を維持することが必要とされる。このため使用する側としては、初期特性のみならず、長期特性、即ち劣化に関する知識が必要である。特に基礎過程にもとづいて劣化を定量的に取り扱うことは、システムの保守管理上非常に重要である。第2部では、固体絶縁物に見られるいくつかの劣化モードと、劣化の定量化について解説する。

 1. 熱劣化
 2. 部分放電
 3. 電気トリー
 4. 水トリー
 5. トラッキング
 6. イオンマイグレーション
 7. 劣化の定量

第3部 絶縁劣化の非破壊診断
 絶縁物は通常システムの内部に密閉されていることが多く、外部からその健全性を診断することが難しい。そのため外部に取付けた測定装置を使用し非破壊的に診断することが行われる。講演者が経験した電気的、音響的な劣化診断を中心に、技術的解説を行う。