土壌埋設された鋼製パイプラインの腐食と防食技術

新電気防食基準から解説する講座。実務で活躍する講師が腐食の基礎と分類から、電気防食、交流腐食および微生物腐食の防止法までを詳解!

土壌埋設された鋼製パイプラインの腐食と防食技術

共催:R&D支援センター

日時:2011年7月11日(月) 10:30〜17:30

<講師の言葉>
水道、ガス、電気、通信等のライフラインとしてのパイプラインは、そのほとんどが土壌に埋設されている。土壌は、微生物の宝庫であるため、パイプラインは微生物腐食を受ける。また、パイプラインは水平方向に長いことから、電気鉄道のレール漏れ電流、高圧交流送電線による交流誘導の影響を長距離に亘って受けるので、パイプラインならではの腐食を被り、パイプラインならではの防食技術が必要となる。

 今回、パイプラインの腐食を概括し、中でも微生物腐食、1980年代中頃より欧米で顕在化した交流誘導に起因する交流腐食を詳細に紹介するとともに、防食技術として電気防食法、交流誘導低減技術について述べる。

 パイプラインの電気防食基準は、1933年、Kuhnが提案した「防食電位-0.85V(飽和硫酸銅電極基準)よりマイナス」が今日でも土壌中や水溶液中の鋼製パイプラインのみならず鋼構造物に対しても適用されている。しかしながら、交流誘導レベルが高いと、この防食電位基準は適用できない。パイプラインの交流腐食リスク計測評価、及び交流腐食防止を考慮した新電気防食基準を紹介する。この新基準は、現時点でISOによる国際基準化作業が行われている。

<プログラム>
1.序論
  1-1 腐食とは何か?
  1-2 腐食はどのように検知できるか?
    (1).金属の腐食電位と管対地電位
    (2).管内電流
    (3).地表面の2本の照合電極間の電位差
  1-3 腐食はどのように防止できるか?
2.腐食のタイプ
  2-1 埋設金属体の腐食の分類
  2-2 外部と電気的やりとりのある電食(迷走電流腐食)
   (1)電食とは何か?
   (2)直流電食
     a.直流電気鉄道のレール漏れ電流
      ・直流電食の始まりと発生メカニズム
      ・直流電気鉄道の回生車両による直流電食リスクの発生
      ・最近問題となっている直流電食リスク
     b.直流電流による地中電位勾配
      ・接地抵抗の低いレールで流出入する直流電流に起因する地中電位勾配
      ・カソード防食に起因する地中電位勾配
   (3)交流腐食(交流電食)
     a.交流電気鉄道のレール漏れ電流
      ・交流腐食研究の芽生え
      ・交流腐食発生メカニズム
      ・1980年代半ば以降欧米で発生した交流腐食事例と解析
  2-3 外部とやりとりのない自然腐食
   (1)自然腐食とは何か?
   (2)自然腐食
     a.マクロセル腐食
      ・異種腐食環境
        コンクリート/土壌マクロセル腐食
        通気差マクロセル腐食
      ・異種金属接触腐食
        異種金属接触マクロセル腐食
        新旧管マクロセル腐食
        ミルスケールマクロセル腐食
     b.選択腐食
      ・黒鉛化腐食
      ・脱亜鉛腐食
     c.微生物腐食
     d.ミクロセル腐食
3.防食
  3-1 防食の基本的考え方
  3-2 防食法の分類
  3-3 各種防食法
   (1)プラスチック被覆・歴青質コーティング・塗装による防食法
   (2)電気防食法
     a.電気防食の歴史
     b.電気防食の原理
     c.流電陽極法式による電気防食
     d.外部電源方式による電気防食
     e.流電陽極法式と外部電源方式との比較
     f.ハイブリッド方式
   (3)排流法
     a.排流法の原理
     b.選択排流法
     c.強制排流法
   (4)交流誘導低減法
     a.分散接地されたアース電極による交流誘導低減
     b.交流誘導低減器による交流誘導低減
     c.分散接地されたアース電極と交流誘導低減器との比較
   (5)その他の防食法
     a.絶縁による防食
     b.メッキによる防食
     c.塗装による防食
     d.耐食性材料による防食
     e.ポリエチレンスリーブによる防食
4.電気防食基準
  4-1 防食電位基準を指標とした電気防食基準
  4-2 クーポン電流密度を指標とした電気防食基準
5.電気防食効果計測上の注意点
  5-1 管対地電位計測に関する注意点
  5-2 クーポン電流密度計測に関する注意点
6.交流腐食とその防止
  6-1 交流腐食と電気防食との関係の認識
  6-2 交流腐食に及ぼす各因子の影響
   (1)腐食速度に及ぼす交流電圧の影響
   (2)腐食速度に及ぼす交流電流密度の影響
   (3)腐食速度に及ぼすカソード電流密度の影響
   (4)腐食速度に及ぼすコーティング欠陥部の面積の影響
   (5)腐食速度に及ぼす周波数の影響
   (6)腐食速度に及ぼす土質の影響
   (7)腐食速度に及ぼす温度の影響
   (8)腐食速度に及ぼす時間の影響
  6-3 交流電食防止を考慮した電気防食基準
   (1)海外の交流電食防止を考慮した電気防食基準
   (2)あらゆる腐食リスクの排除と過防食防止を考慮した電気防食基準
  6-4 交流腐食防止方法
  6-5 交流腐食リスク計測評価例
7.微生物腐食とその防止
  7-1 微生物腐食研究史俯瞰
  7-2 微生物の特質
  7-3 微生物腐食の特異性
  7-4 土壌中の鋳鉄の腐食
   (1)土壌腐食に深く関与する微生物
     a.硫酸塩還元菌(SRB)
     b.メタン生成菌(MPB)
     c.鉄酸化細菌(IOB)
     d.硫黄酸化細菌(SOB)
     e.鉄細菌(IB)
   (2)EhとpHの関係及び微生物の活性域
   (3)微生物腐食速度
   (4)微生物腐食メカニズム
     a.SRBによる腐食メカニズム
     b.IOBによる腐食メカニズム
     c.IBによる腐食メカニズム
  7-5 鋼の腐食に及ぼす印加分極電位の影響
   (1)SRBが生息する粘土中の鋼の腐食に及ぼす印加分極電位の影響
   (2)IBが生息する砂質土壌中の鋼の腐食に及ぼす印加分極電位の影響
   (3)カソード電流密度
     a.SRBが生息する粘土中の鋼の種々の印加分極電位におけるカソード電流密度の経時変化
     b.IBが生息する砂質土壌中の鋼の種々の印加分極電位におけるカソード電流密度の経時変化
   (4)カソード防食による微生物腐食防止メカニズム
     a.SRBが生息する粘土中の鋼
     b.IBが生息する砂質土壌中の鋼
  7-6 まとめ