溶接継手及び機械装置における疲労強度の低下原因とその改善法

機械や構造物の信頼性評価には欠かせない溶接部の接合信頼性を確保するための講座!溶接部における疲労破壊の解析から今までになかったショットピーニングによる改善法までを解説する特別セミナー!

溶接継手及び機械装置における疲労強度の低下原因とその改善法

共催:R&D支援センター

日時:2011年8月31日(水) 10:30〜17:30

[講師の言葉]
 溶接構造物、機械装置、工作機械、産業機械、建築、橋梁の破壊事故例を原因別に整理すれば、疲労破壊が約80〜90%を占めている。疲労破壊は突然発生するので多数の犠牲者と多くの資金を一瞬にしてなくす。 最近の日本での疲労破壊例としては、1985年の日航ジャンボ機の墜落による552名の尊い犠牲者や1999年のH2ロケット8号の打ち上げ失敗による数百億円の損失があげられる。

 本講義では銅めっき応力測定法を用い、X線やひずみゲージでは絶対に測定ができない金属の結晶粒一つのひずみを測定し、その結果から疲労亀裂の発生個所や亀裂の進展を正確に予測する方法を解説する。これを基に溶接継手を主に種々の疲労強度改善法について説明する。特に改善法の中でもショットピーニング処理法の効果は大きく、余盛付溶接継手の疲労強度はこの処理により、溶接していない平滑母材よりも上昇するという溶接部の疲労関係者に取っては、まさに夢の改善効果が実験的に得られた。

 ショットピーニング処理法は、ばねや歯車のような硬い材料の疲労強度改善に大きな効果があることは周知であるが、実際は溶接継手のように炭素当量が低い軟材料にも有効な手段であり、あらゆる工業・産業分野で用いられる硬度の低い材料の疲労強度改善にも大きな効果があるので、積極的に利用できるように詳細な解説をする。

[プログラム]
Ⅰ.最近の疲労破壊事故例とその原因
  1.溶接構造物および機械部品の破壊の80〜90%は疲労破壊
  2.疲労破壊は突然発生するので多数の犠牲者と莫大な被害をもたらす

Ⅱ.機械加工部品と溶接継手の疲労強度は同一
  1.疲労強度の改善は疲労亀裂発生箇所を知ることから始まる
  2.疲労強度に大きな影響を及ぼす3大要因(応力集中、硬さ、残留応力)

Ⅲ.銅めっき応力測定法を用いた疲労破壊の解析(研究例)
  1.粒内のひずみ分布が測定できる同めっき応力測定法の原理
  2.高張力鋼溶接継手におけるひずみ集中と疲れ亀裂の発生
  3.疲労強度に及ぼす余盛角度および余盛止端半径の影響
  4.疲労強度に及ぼす余盛高さおよび余盛幅の影響
  5.疲労強度に及ぼす余盛形状およびアンダーカットの影響
  6.疲労強度に及ぼす気孔の影響
  7.T継手の疲れ強さに及ぼす溶接法の影響

Ⅳ.溶接継手の疲労強度に及ぼす溶接法と溶接姿勢の影響(研究例)
  1.溶接法と余盛形状との関係
  2.被覆アーク溶接棒と余盛形状
  3.溶接姿勢と余盛形状との関係

Ⅴ.溶接継手の疲労強度の改善法(研究例)
  1.ショットピーニング処理法について
  2.余盛止端部の応力集中の緩和
    a.ハンマーピーニング
    b.レーザによる止端部の再溶融
    c.グラインダー仕上げ
  3.余盛止端部の硬さ
   a.亜鉛浴加熱急冷
    b.溶接時の熱サイクルによる硬化
    c.ショットピーニング処理
  4.圧縮残留応力の付与
    a.引張り余ひずみ
    b.局部加熱急冷
    c.ウオータージェット
  5.亀裂進展速度
    ・合成樹脂の塗付(鋼材の場合)