非接触電力伝送システムの設計・開発と利用技術

国際標準化動向、電磁誘導方式の高効率化と産業利用、人体安全対策、磁気共鳴型の設計と共振器の選択、移動式電力伝送の高効率化!

非接触電力伝送システムの設計・開発と利用技術

主催:R&D支援センター

日時:平成22年6月29日(火) 10:15〜16:40

第1部 ワイヤレスパワーコンソーシアムの国際規格標準化と最新動向

<講座趣旨>
近年ポータブルデバイス、とりわけ携帯電話と携帯音楽プレーヤーの急速な普及は目覚しいが、毎年50%近くに達する頻繁な買い替え需要を背景に、それらのデバイスに付属する充電器(ACアダプター)の廃棄問題、更に複数充電器の同時使用による総待機電力について環境への影響が懸念され、その対抗策として充電器の共通化、標準化が各業界で議論され推進されてきている。また、日々進化するポータブルデバイスは、その革新的な性能の向上に支えられたサービスの多様化を追い風に更なる多機能化を果たしてきており、日常生活のあらゆるシーンに登場する生活必需品へと変貌してきているが、その利便性、可搬性を損ねない充電方法として非接触充電が注目されている。
 本講演では、こうしたポータブルデバイス充電への要求に応え、「いつでも、どこでも、簡単充電」を基本コンセプトとした非接触充電の国際規格標準化を推進するWPC(ワイヤレスパワーコンソーシアム)の活動内容と、現在策定中の標準規格の概要について紹介する。

<プログラム>
1.無接点充電標準化の背景と普及の条件
2.WPCのビジョンと組織
3.標準化のプロセスとサービス
4.Volume 1の基本コンセプト
5.製品要求書(CR)の概要
6.標準システムの基本構成
7.電力の制御と負荷変調
8.パート2、およびパート3について
【質疑応答・名刺交換】

第2部 電磁誘導方式による非接触給電の原理・技術と産業機器への応用

<講座趣旨>
電磁誘導方式の非接触給電装置では、電動バス等の充電用に出力数十kWクラスの装置が開発されており、総合効率(地上側受電端から車両側送電出力端までの全損失を含めた効率)で92%を超える高効率が実現されています。
 本講では同装置で使われている高効率化の手法を御紹介します。あわせて、非接触給電各方式の概要や、人体防護や電波法対応など、そして産業用途での応用例なども御紹介致します。

<プログラム>
1.非接触給電技術の概要
 1-1.非接触給電の各方式と使用周波数・波長
 1-2.近傍界と遠方界、磁界と電界と電波
 1-3.共振回路と共鳴方式について
 1-4.電磁誘導による非接触給電の原理
 1-5.スポット給電方式とレール方式

2.電磁誘導方式の技術詳細
 2-1.IPS非接触給電システムの詳細
 2-2.制御回路および通信システム
 2-3.低損失パワーエレクトロニクス部品のポイント
 2-4.高効率化のための手法

3.安全対策および電波法対応
 3-1.人体防護(電波防護指針、ICNIRP)
 3-2.電波法対策(微弱無線局、高周波利用設備)
 3-3.誘導加熱対策

4.産業用途での実用化例、応用例
 4-1.EV(電気自動車)、LRT路面電車)など
 4-2.工場内搬送システムなど
 4-3.電動自転車、自動搬送車、ロボット、電動工具など
 4-4.特殊環境への応用(隔壁、水中、回転体など)
 4-5.市販品の例

【質疑応答・名刺交換】

第3部 “磁気共鳴型”ワイヤレス給電システムの設計と共振器の選択

<講座趣旨>
MITによって提案された磁気共鳴型ワイヤレス給電システムはフィルタ理論を用いれば簡単に設計できることが分かる。具体的なシステムについて設計例を示し注意点について述べる。システムの特性のうち特に重要な点は結合の距離、伝送損失、放射損失、小型化であるから、それらを最適化する方法についても説明を与える。

<プログラム>
1.共鳴型システムの原理
  1-1.共鳴とは何か
  1-2.共振器の結合
  1-3.システムの等価回路
  1-4.BPF理論による設計
2.設計法
  2-1.設計理論
  2-2.共振周波数
  2-3.結合係数
  2-4.外部k
3.設計例
  3-1.対称な50Ω系
  3-2.結合係数の大きな場合
  3-3.結合係数の小さな場合
  3-4.負荷抵抗が任意の場合
4.共振器の選択
  4-1.結合係数の極大化
  4-2.無負荷Qの極大化
  4-3.放射損失の低減
  4-4.小型化
【質疑応答・名刺交換】

第4部 移動式ワイヤレス電力伝送技術の開発

<講座趣旨>
マイクロ波帯に於いて共振器間結合、線路間結合を利用した回路素子はそれぞれフィルタ、方向性結合器として広く用いられている。講師はそれらの概念がワイヤレス電力伝送に応用できることに気付き,ここでは移動式電力伝送に線路間結合を利用する事を提案する。マイクロ波回路素子として用いるときと,ワイヤレス電力伝送に用いるときとでは多くの構造上の違いがあるので,如何に工夫して効率の良い電力伝送を実現するかが課題である。

<プログラム>
1.ワイヤレス電力伝送の方式
  1-1.共振器間結合と線路間結合
  1-2.共振器/線路間結合
2.マイクロ波回路の転用
  2-1.帯域通過フィルタ
  2-2.方向性結合器
  2-3.方向性フィルタ
3.移動式電力伝送
  3-1.一様線路
  3-2.ブロ−ドサイド結合
  3-3.TEMモードからのずれと整合
  3-4.共振器/線路間結合方式の整合
4.応用への道
  4-1.電気自動車の走行中充電
  4-2.電車からのパンタグラフ除去