エアベアリングの設計法とそのノウハウ
超精密加工機に使われる、空気静圧軸受の具体的設計法を修得しよう!
共催:R&D支援センター
日時:2011年6月23日 (木) 10:30〜17:30
<講座のポイント>
1991年のバブル経済崩壊以後、韓国や中華人民共和国などの新興国の台頭により汎用の加工物は、日本国内で加工した場合の生産コストでは、これら新興勢力に対抗することが困難になり、日本国内に残された物作りは、超精密な加工物に限られて来た。
超精密な加工が行える工作機械に必ず組み込まれているのが、「空気静圧軸受」である。超精密加工に取り組もうとして、あるいは既存の工作機械を空気静圧軸受仕様に改造しようとして、空気静圧軸受を買い求めようとすると、想像以上に製品ラインナップが少なく、思うようには行かないのが実情である。
単品で、ゼロから設計して特注の空気静圧軸受を入手しようとすると、最低でも300万円ほどかかってしまうのも実情である。また、空気静圧軸受仕様に変更するような加工では、極秘のプロジェクトである場合も多く、外部に委託して、特注の空気静圧軸受を作ってもらうと言うことには危険が伴ってしまう場合も多い。
そこで、自作と言うことになるのだが、空気静圧軸受の設計方法の詳しい解説書は少ない。講師は、こう言った事情から、自作で空気静圧軸受を製作し、直径0.03mmの超微細な穴を明けることが可能で、直径0.3mmの穴では、穴径の170倍(50mm)の深さの穴を明けられる旋盤型微細穴加工機を開発し、2004年2月、新機械振興協会から中小企業庁長官賞を受賞した。
この工作機を使い、直径0.03mmの穴を、10mm□の平面に1400個明けて、次世代のICチップ(厚み0.05mmのシリコンウェハ)の吸着ノズルを完成させ、ICチップが埋め込まれたカードが作られるようになった。また、空気静圧軸受はエア供給ラインに何らかのトラブルが発生し、エアの供給が止まると、致命的な損傷を来たし、修理に50〜60万円が必要となり、修理期間も数カ月に渡るので、工場のダメージは計り知れないものとなる。
このためには安全装置が必要となるが、安全装置の作り方を紹介する文献も少ないのが実情である。本講座では、空気静圧軸受けの設計方法と事故対策(安全装置)を講義する予定である。
<プログラム>
Ⅰ. 空気静圧軸受けの事故
1.フェイルセイフ(Fail-safe)
2.インターロック(Interlock)
3.空気静圧軸受けの事故原因
4.空気静圧軸受けのフェイルセイフ
a.バッファータンク(Buffer Tank)
b.ノンリターンバルブ(Non Return Valve)
c.圧力スイッチ(Pressure Switch)
Ⅱ. 空気静圧軸受け設計のための基礎知識
1.その種類(自成絞り/表面絞り/オリフィス絞り/多孔質絞り他)
2.層流と乱流について
3.空気静圧軸受けの性能を決定する要素
a.剛性
b.負荷能力
c.空気消費量
d.空気圧力
e.軸径/軸長
f .ノズル(給気孔)径/数
g.偏心率
Ⅲ. 自成絞り空気静圧軸受けの設計方法
1.ラジアル軸受けの設計法
a.一般的に知られているラジアル軸受け設計法の落とし穴
2.スラスト軸受けの設計法
a.一般的に知られているスラスト軸受け設計法の落とし穴
Ⅳ. オリフィス絞り空気静圧軸受けの設計法
1.ラジアル軸受けの設計法
2.スラスト軸受けの設計法
Ⅴ. 多孔質絞り空気静圧軸受けの設計法
1.ラジアル軸受けの設計法
2.スラスト軸受けの設計法
3.乱流スロット絞り‐動圧‐ハイブリッドスラスト軸受け
Ⅵ. 構造設計上の注意
Ⅶ. 自立回転型空気静圧軸受けの設計法
1.DCブラシレスモーターのビルトイン
2.エアタービンのビルトイン
a.衝動タービンと反動タービン
Ⅷ. 超高感度切削動力計のビルトイン
1.トルク検出機構
2.ナノメータ台の変位が検出できるスラストセンサ
3.ナノメータ台の変位が検出できるモーメントセンサー