EMC対策を不要にするスイッチング回路設計と最新技術

EMC問題の根本を探り、設計の小型化、軽量化、高周波化で起こる課題解決に活かそう!

EMC対策を不要にするスイッチング回路設計と最新技術

共催:R&D支援センター

日時:2011年9月29日(木) 10:30〜17:30

[講師の言葉]

EMC対策は設計の源流で行うべきと言われてきて久しい。これは、対策のための部品や材料を必要としない回路設計が必要という意味である。しかし、現実のEMC対策は、多種多量の部材を使用して行われ、部材の選定や使用法について、設計の専門家ではない所謂EMC技術者のアドバイスが必要とされて久しい。
 大型コンピュータの電源装置を中心に回路技術の設計・開発を25年間担当し、その後機会を得て中央研究所でEMC技術の研究に携わることになった。その中でEMC対策部品や材料を必要としない回路設計を阻害している要因を徹底的に洗い出した。その結果、13年程度の研究生活の中でEMC問題の根本原因を探り当てることに成功した。

 しかしその段階で会社の定年を迎えたため、会社を興して、EMC問題の根本原因を説明するための理論の構築と、EMC問題の根本原因を除去する技術の研究会開発に取り組んだ。その結果、スイッチングモード回路には、従来の回路設計理論や伝送線路理論に代わる新しい回路理論と技術のアイデアがまとまった。

 これによって、回路技術者の手でEMC問題の無い回路設計が可能になるだけでなく、回路の性能を一段と向上させることが可能になる見通しを得た。これらのアイデアについて多くの研究者や技術者の批判を仰ぐために、2006年からIEEEを始めとする学会等で発表してきたが、最近では評価が高まってきている。

 大電力回路においては、不要電磁波が有するエネルギーは大きく、EMIの対策が難しいだけでなくスパイクノイズによってスイッチング素子自らが破壊する可能性もあり、高周波化は無理とされてきた。

しかし、大電力回路に新しい回路理論や技術を採用すると、EMC対策が比較的容易になるだけでなく、高周波化による小型軽量化、原価低減、設計TATの短縮、信頼性の向上を計ることが可能になると考えられる。電磁気学によれば、 
スイッチングモード回路を含む交流回路は電磁波の回路と定義されている。しかし、現行の回路理論はこの定義に反している。

 本講の前半では、現行の回路理論から生じる、EMCを始めとする様々な問題点を、物理学、電磁気学の観点からレビューする。本講の後半では、現在提案中の新しい回路理論と、この理論から導き出された新しい技術とこれらの開発状況を紹介する。

[プログラム]

Ⅰ.EMC技術概論
Ⅱ.スイッチング電源のEMC対策、電源分配回路技術、および半導体LSIの配線(インターコネクト)技術の動向
Ⅲ.EMC問題の原因を探るために行った研究成果の紹介
Ⅳ.従来の回路理論,回路部品の問題点
Ⅴ.スイッチングモード回路のための新しい回路理論と技術の紹介
  1.電磁気学によると交流回路(スイッチングモード回路も含まれる)は電磁波の回路
  2.マックスウエルの最大の業績の一つは、マックスウエルの方程式ではなくて電磁波と光が同一の物理現象であることを証明したベクトル波動方程式とその解
  3.最近の物理学によれば、電磁波を含む波には、はじめと終わりのない連続波と、孤立した波(ソリトン波)の二つがあり、いずれかであるかは、波源によって決まる
  4.連続波から孤立波は形成されないが、孤立波から連続は、伝搬途中で比較的容易に形成される
  5.スイッチングモード回路の波源は瞬時動作であるので、明らかに孤立を励起する
  6.電磁気学における電磁波理論と、比較的新しい非線形波動理論を融合させると、スイッチングモード回路に適する回路理論を構築することが出来る
  7.電磁気学の定義に忠実な新しい回路は、EMCだけでなく性能の向上も可能とする
Ⅵ.新しい理論と技術の応用と効果
Ⅶ.演習 (ディスカッションおよび質疑)
 ・講義内容に関する質疑応答
 ・新しい理論・技術についてのディスカッション